サブ課題Cエネルギー・資源の有効利用 – 化学エネルギー
分離・回収、貯蔵、相互変換の高効率化によりエネルギー多消費型工業プロセスを革新
サブ課題 C 目標
サブ課題Cでは、資源・環境の観点から、メタンハイドレートの効率的な融解、触媒の高性能化、CO2分離・回収技術の発展に貢献すべく計算科学を用いた研究を進めています。
メタンハイドレートを発掘し、地上に取り出す過程の海水中でのメタンハイドレートの融解について、分子間に働く力から分子の動きを計算する分子動力学ソフトMODYLASなどを使って解析しています。
次に、化学反応がどのように起こるかを計算する反応経路自動探索法GRRMに、サブ課題Aで開発する大規模系の電子状態を精度よく計算するNTChemを合体させて実用的問題に適用させる研究開発を進めています。併せて、白金(希少金属)を使わない燃料電池用の新しい触媒などの研究も行っています。
さらに、温室効果ガスのひとつであるCO2の分離・回収に関して、その効率化やコスト削減を取り上げ、大規模量子化学計算による化学反応を伴う分子動力学シミュレーションを実現したDC-DFTB-Kを用いて、CO2吸収・放出反応のメカニズムおよび性質を明らかにすることに取り組んでいます。また、吸収剤の改良や新しい吸収材料についても研究しています。
これらの課題に関して、実験では決して見ることができない分子の動きや反応の様子を見るために、世界最先端の理論・計算手法をそれぞれのシミュレータとして開発整備しています。各シミュレータとポスト「京」の強力な計算パワーを使って、化学エネルギーの創成から消費に至る過程において、資源利用の効率化や環境改善への指針を提供することが目標です。
サブ課題 C 概要
化学エネルギー創成から消費に至る過程において、メタンやCO2の分離・回収、貯蔵、触媒反応によるエネルギー・資源の有効利用に関わる基盤技術を開発し、高効率な分離・回収、貯蔵、相互変換法の実用への橋渡しとするための指針を提供します。そのために、電子状態理論と分子動力学法(MD)を基盤とした統合シミュレーション技術を構築し、実用的な物質設計に向けて分子レベルからの指針を提供します。こうした貢献によって、エネルギー多消費型の工業プロセスの革新を目指すものです。化学エネルギーを対象とする本サブ課題は、ハイドレート、触媒、CO2分離・回収という3点から構成されています。
ハイドレート
エネルギー資源として大量に存在するメタンハイドレートの効率的採取法の開発を目指して、大規模長時間MDシミュレーションを実施し、メソスケールでの解離の機構解明、解離の律速過程の探索を行ない、効率的な融解法への指針を得ます。さらに、ポスト「京」を駆使した大規模な構造探索から、蓄冷材としてのセミクラスレートの性能の向上のための包括的な評価を行います。
触媒
反応経路自動探索法GRRMをNTChemに連成し、CO2有効資源化と燃料電池非白金系触媒に焦点を当てた研究を行います。
CO2の分離・回収
分割統治法を中心としたアプリの高度化を行い、消費エネルギーコストを削減する新規アミンの提案・最適なアミン混合比を予測します。更に、溶液系だけでなく金属有機構造体(MOF)やゼオライトのような多孔質材料を用いた手法に関する技術を確立します。
紹介ビデオ:CO2の分離・回収~持続可能な社会の実現に向けて~
(外部サイト)課題説明
サブ課題 C 成果
これまでの成果をご紹介します(2018年03月現在)。
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成果例 018【H30年度】メタンハイドレートの溶融や貯蔵に向けた新規技術の理論自然科学研究機構 分子科学研究所
- 奥村 久士、伊藤 暁、石村 和也
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成果例 017【H30年度】非白金系燃料電池触媒の高機能化北海道大学 大学院理学研究院
- 武次 徹也
物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点- Andrey Lyalin、坂牛 健、魚崎 浩平
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成果例 016【H30年度】ハイドレートが安定に存在できる条件岡山大学 異分野基礎科学研究所
- 田中 秀樹、松本 正和、矢ヶ崎 琢磨
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成果例 015【H30年度】ハイドレートに対する速度論的阻害剤岡山大学 異分野基礎科学研究所
- 田中 秀樹、松本 正和、矢ヶ崎 琢磨
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成果例 014【H30年度】GenIceの開発岡山大学 異分野基礎科学研究所
- 田中 秀樹、松本 正和、矢ヶ崎 琢磨
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成果例 013【H29年度】アミン水溶液中で起こるCO2吸収素反応の速度論早稲田大学 先進理工学部
- 中井 浩巳、吉川 武司
早稲田大学 理工学研究所- 西村 好史、周 建斌
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成果例 012【H29年度】凝縮相内化学反応シミュレータの高速化早稲田大学 先進理工学部
- 中井 浩巳、吉川 武司
早稲田大学 理工学研究所- 西村 好史、周 建斌
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成果例 011【H29年度】非白金系燃料電池触媒の高機能化北海道大学 大学院理学研究院
- 武次 徹也、高 敏
NIMS ナノ材料科学環境拠点- Andrey Lyalin、魚崎 浩平
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成果例 010【H29年度】階層的MPI並列計算機能の実装北海道大学 大学院理学研究院
- 小野 ゆり子、原渕 祐、前田 理、武次 徹也
自然科学研究機構 分子科学研究所- 石村 和也
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成果例 009【H29年度】ハイドレートに対する速度論的阻害剤岡山大学 異分野基礎科学研究所
- 田中 秀樹、松本 正和、矢ヶ崎 琢磨
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成果例 008【H29年度】GenIceの開発岡山大学 異分野基礎科学研究所
- 田中 秀樹、松本 正和、矢ヶ崎 琢磨
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成果例 007長距離相互作用計算の効率化により大規模周期系の超並列電子状態計算を高速化するアルゴリズムのプログラム実装を行った。早稲田大学 先進理工学部
- 中井 浩巳、吉川 武司
早稲田大学 理工学研究所- 西村 好史、周 建斌
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成果例 006超並列電子状態計算を用いた溶液中でのCO2吸収シミュレーションにより、吸収液設計の指針を示すことができた。早稲田大学 先進理工学部
- 中井 浩巳、吉川 武司
早稲田大学 理工学研究所- 西村 好史、周 建斌
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成果例 005二酸化炭素を原料とする化成品合成に有効な高性能触媒の開発に成功。理論計算によりさらなる触媒性能向上につながる知見を得ることができた。北海道大学 触媒科学研究所
- 長谷川 淳也
岡山大学工学部- 依馬 正(実験)
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成果例 004理論計算による酸素還元・水素発生機構の解明により、燃料電池の非白金系酸素還元触媒候補(BN/Au)の高機能化の知見が得られた。北海道大学 大学院理学研究院
- 武次 徹也
NIMS ナノ材料科学環境拠点- Andrey Lyalin(理論)、野口 秀典(実験)、魚崎 浩平(実験)
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成果例 003超音波をかけることによる、メタンハイドレードのメカニカルな溶融のシミュレーションを行うために、周期境界条件下でサインカーブ状に時間変化する圧力をかける分子シミュレーション等を開発した。自然科学研究機構 分子科学研究所
- 奥村 久士、伊藤 暁、石村 和也
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成果例 002自由エネルギー計算を活用した結晶成長過程の解析。岡山大学 異分野基礎科学研究所
- 田中 秀樹、松本 正和、矢ヶ崎 琢磨
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成果例 001ハイドレートの生成シミュレーションが高詳細に実施できる手法を開発。岡山大学 異分野基礎科学研究所
- 田中 秀樹、松本 正和、矢ヶ崎 琢磨
サブ課題 C 研究体制
平成29年度は以下の研究開発を連携し実施します。
サブ課題 C 実施計画
平成31年度までのシミュレーション技術の確立と実証と先行的成果の創出に向けて、年度ごとに目標を立てて研究開発に取り組んでいます。