研究成果

これまでに創出した成果をご紹介します。

サブ課題C 成果例015

岡山大学 異分野基礎科学研究所
  • 田中 秀樹、松本 正和、矢ヶ崎 琢磨

【H30年度】ハイドレートに対する速度論的阻害剤

 これまでの研究で我々は速度論的阻害剤(Kinetic Hydrate Inhibitor, KHI)と呼ばれるポリマーによる包接水和物の生成遅延化がGibbs-Thomson効果によることを明らかにした。これを基にして、KHIのサイズ効果に関する新しいモデルを提唱した。分子動力学シミュレーションを用いて、このモデルの重要なパラメータである包接水和物への吸着自由エネルギーをPVCapについて計算した。我々のモデルは、実験で示されているPVCapのサイズ効果を良く再現することができた。このモデルはさらに、大きなポリマーと小さなポリマーの混合物の性能が高いこと、ならびに、ガスハイドレートには機能しない四級アンモニウムカチオンがTHF(Tetrahydrofuran)ハイドレートに対しては有効なKHIとなる機構についても包括的に説明することができた(図1)。

図1 包接⽔和物の表⾯に吸着するポリマーによる結晶成⻑の速度低下

[1] "Adsorption of Kinetic Hydrate Inhibitors on Growing Surfaces: A Molecular Dynamics Study"
T. Yagasaki, M. Matsumoto, H. Tanaka, J. Phys. Chem. B, 122, 3396–3406 (2018)