研究成果

これまでに創出した成果をご紹介します。

サブ課題A 成果例009

神戸大学 大学院科学技術イノベーション研究科
  • 天能 精一郎、大西 裕也、土持 崇嗣、上島 基之、Xu Enhua

【H29年度】ポストPHF法の研究開発

 ポストPHFでは分子内の電子数(o)の数の占有軌道とその数倍〜数十倍(v)の仮想軌道が存在し、これらのうち仮想軌道4つを添え字に持つv4オーダーの分子積分 (ab||cd) の生成がグリッド点ごとに必要となることが、「京」での限られたメモリ仕様において大きなボトルネックであった。
 そこで露わな分子積分計算を占有軌道を含むもののみに限定し、(ab||cd) などについては必要なときのみ逐次的に計算しなおすように改善を行うことで大幅な省メモリ化に成功した。窒素分子の巨大なcc-pV5Z基底関数 (o = 14, v = 350) を用いたテスト計算において、従来法では必要メモリがグリッド点あたり30GB以上と膨大であったが、高度化により200MBにまで落とすことが可能になった。また、計算スピードも実質的にv5オーダーである分子積分変換が律速過程であったが、これを回避することでo2v4オーダーにし、シングルコアで2074 CPU秒から173 CPU秒と劇的に改善された。これらの成果によって、より広範な分子に対してポストPHFが適用可能になった。
また、配置間相互作用 (ECISD) を拡張した結合クラスター近似 (ECCSD) を開発したが、これについても同様の成果が得られている。
 本アルゴリズムとECCSDを用いて強く縮退した遷移金属化合物(Mn2, NiO, [Cu2O2]2+)の構造最適化及び分光定数やスピンギャップ、ポテンシャルエネルギー曲線などの計算を行なったところ、従来の結合クラスター近似(CCSD)に比べ、高精度多参照理論の結果を遥かによく再現できることを示した。

ポストPHF高度化前(破線)と後(実線)による必要メモリ量(MB)とCPU時間(秒)のN2分子における基底関数依存性

T. Tsuchimochi and S. Ten-no, J. Chem. Phys. 149, 044109 (2018); T. Tsuchimochi and S. Ten-no, J. Comp. Chem. in press.