研究成果

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サブ課題B 成果例021

名古屋大学 大学院情報学研究科
  • 長岡 正隆、稲垣 泰一、Amine BOUIBES

【H30年度】負の電位下における被膜-電極界面の構造

 電極表面の電子分極効果を考慮し、電極に負の静電位をかけることにより、溶媒としてのエチレンカーボネート(EC)が電極表面第一層で強く配向することが分かった。これから、被膜形成がECの還元から始まることが確かとなった。また、被膜形成シミュレーションを行った結果、これまでの電極分極が無い場合に比べ、被膜構成要素の一つである炭酸イオンが電極表面に強く吸着し続けることが明らかとなった。これは、電極へのリチウムイオン挿入のメカニズムに強く影響する被膜-電極界面の構造に関する有用な知見である。さらに電池作動環境下で予測される被膜構造変化の分子機構を調査した。そこでは、(1)被膜は熱運動では容易に崩壊せずに逆に凝集すること、(2)電極表面の静電環境の変化に対して被膜構造は鈍感であること、(3)被膜の構成要素として存在するリチウムイオンの拡散が、電解液に接した被膜構造を壊すこと、を明らかにした。これらの結果が偶然でないことを示すために独立した複数の膜構造を用意しなければならないこと、そして非常に遅い被膜構造変化を追うために合計で数μs以上のMDシミュレーションが必要であることから、「京」の使用が非常に重要である、と言える。

図. SEI膜形成直後の反応生成物のモルフォロジー。無機物は電極近くに、有機物は電解液側に存在する。電極と有機物の間に気体分子が存在している。

[1] A. Bouibes, N. Takenaka, T. Fujie, K. Kubota, S. Komaba, M. Nagaoka, ACS Appl. Mater. Interface, 10, 28525-28532 (2018).
[2] T. Inagaki, N. Takenaka, M. Nagaoka, Phys. Chem. Chem. Phys., 20, 29362-29373 (2018).