研究成果

これまでに創出した成果をご紹介します。

サブ課題B 成果例016

東京大学 物性研究所
  • 杉野 修、笠松 秀輔、春山 潤、山本 良幸、Lei YAN
大阪大学 大学院工学研究科
  • 濱田 幾太郎、森川 良忠
産業技術総合研究所
  • 大谷 実

【H30年度】電気二重層形成へのアプローチ

 燃料電池のサイクリックボルタンメトリー(CV:電流電圧曲線)を予測できるアプリの開発のために、電気二重層効果を考慮した第一原理計算手法を発展させた。そのため、高並列計算が可能な電子状態計算パッケージSTATEに、溶液側の電気二重層(ヘルムホルツ層)をRISM法に基き考慮できる手法を移植する作業を開始し、これを順調に進めた。この金属電極系のための手法開発に加えて、半導体電極系のための手法開発も行った。すなわち、導電性担体・半導体・溶液界面において固体側の電気二重層(空乏層)をab initio MC法に基づき考慮できるプログラムを開発した。また、通常の密度汎関数 (DFT)計算では吸着エネルギーが正しく再現できないため、RPA(Random Phase Approximation)法に基づき補正するための方法を試した。また、水素原子の量子効果を考慮するため、経路積分第一原理計算手法に基づく方法の検討も行った。以上のように、実効的な計算予測をするための非経験的なCV予測を行うという目標に向かって、開発を進展させた(図1)。

図1. 半導体理論と溶液論を組み合わせた電池シミュレーションの構築

空乏層とヘルムホルツ層を考慮した電極触媒のシミュレーション手法を開発した。溶液側での研究から、白金電極における従来のDFT計算を補う方法として、RPA法などを用いた手法が有効であることがわかった。半導体側での研究から、酸化物触媒が白金よりも高活性を示す原因が説明できた。また、活性度向上のための物質設計指針を提示した。