研究成果

これまでに創出した成果をご紹介します。

サブ課題B 成果例007

東京大学 物性研究所
  • 杉野 修、笠松 秀輔、山本 良幸、Lei YAN
大阪大学 大学院工学研究科
  • 濱田 幾太郎、森川 良忠
産業技術総合研究所
  • 大谷 実

【H29年度】電気二重層形成へのアプローチ

 電気化学界面は溶液側の電気二重層形成により、さらに酸化物電極の場合は固体側の電気二重層形成との競合により機能性が大きく変化する。それを理解するためには溶媒分子の構造や欠陥の分布に関して場合の数を尽くして計算する必要があるため、極めて膨大な計算量が必要となる。本アプリでは溶液側に対して溶液理論を適用して必要なサンプリング数を減らし、固体側に対して高度なモンテカルロサンプリングを用いて効率化することにより従来の第一原理計算からの計算予測を飛躍的に向上させる。それによりpHやイオン種などの溶質効果や不純物原子(ドーパント)や酸素空孔などの固体欠陥の効果を取り入れた計算が可能になる[1]。
 溶液側に対してはESM-RISM法を用いた白金水溶液界面などに対するテスト計算を行い、固体側に対してはreplica exchangeを用いたZrO2界面などに対する計算を進め目標に向かっている。さらに、電子状態計算としては簡単化されたDFT-PBEレベルでの計算を行っているが、高精度なDFT-RPAレベルの計算を行いその精度不足を補うための方法を見出した[2]。これらを組み合わせることによりHやOH等の等温吸着曲線を求め、それに基づいて電流電圧曲線を予測するのが目的であり、これを物質の詳細に応じて求めることにより実験と共同の電極触媒開発を進展させることができる。「京」でのプログラミング行う段階にまだ達していないが、並列性能に関しては十分に高効率となるようなモデル設定になっている。

ESM-RISMによる界面の計算
TiO2表面(下)に接する水溶液(上)に対して溶液理論を適用することにより溶媒和効果を効率的に計算することができる。

[1] S. Kasamatsu and O. Sugino, arXiv:1810.12517.
[2] L. Yan, Y. Sun, Y. Yamamoto, S. Kasamatsu, I. Hamada and O. Sugino, J. Chem. Phys. 149 (2018) 164702.