研究成果

これまでに創出した成果をご紹介します。

サブ課題A 成果例031

東京大学 大学院工学系研究科
  • 山下 晃一、川嶋 英佑

【H30年度】大規模励起状態計算による電荷分離過程の解明

 有機太陽電池における、クーロン引力で束縛された電子-正孔対の分離メカニズムに関して、キャリアの拡散に伴うエントロピーの寄与を、モンテカルロ計算により計算し、電子-正孔対の分離過程の自由エネルギーに閾値が存在することを明らかにした。クーロン相互作用は、分離距離の増大にともない徐々に減少し続けるが、キャリアの拡散に伴うエントロピー寄与の増加により、電子-正孔対の分離過程の自由エネルギーは、分離距離6nmで最大値を有する。すなわち、現実的なBHJモルフォロジーを考慮すると、界面から分離距離が6nmに達した後、電子と正孔はエントロピー拡散によって分離することが分かった(図1)。

図1. 電子と正孔の距離Rehについての、クーロンポテンシャル(黒)、自由エネルギー(赤色)、およびエントロピー(青色)変化

[1] Eisuke Kawashima, Mikiya Fujii, Koichi Yamashita,“Entropy Promotes Charge Separation in Bulk Heterojunction Organic Photovoltaics”, J. Photochemistry and Photobiology A: Chemistry, 382, 111875 (2019)