サブ課題A 成果例022
神戸大学 大学院科学技術イノベーション研究科
- 天能 精一郎、上島 基之
【H30年度】モデル空間量子モンテカルロ(MSQMC)法の研究開発
従来のモデル空間量子モンテカルロ(MSQMC)法では倍精度変数を用いて行列式のバイナリ表現を行なっていたため、最大64軌道を超える完全活性空間(FCI)問題を取り扱えなかった。そこで行列式のバイナリ表現を多倍長化し、任意の軌道のFCI問題を取り扱えるように拡張した。また従来のMSQMC法はFlat MPI実装であったためWalkerのメモリ分散においてAlltoAll通信のコストが顕著であった。MPI/OpenMPハイブリッド並列実装したことでその通信コストを約1/8に削減することができ、高度化を実現できた。ハイブリッド並列では分子積分などがメモリ共有されるので省メモリ化も同時に達成できた。このように現行のMSQMCは従来よりも大きな完全活性空間での計算を省メモリで高速に実行可能である。
水素発生系錯体として [Fe2S2]2+(8.6×1027次元のFCI問題)を用いて新規のMSQMCのテスト計算を行った。京コンピュータを用いればシミュレーション可能であり、妥当なFCIエネルギーを与えることが実証された。