サブ課題A 成果例019
東京大学 大学院工学系研究科
- 山下 晃一、浦谷 浩輝
【H29年度】ハロゲン化鉛ペロブスカイト太陽電池の電荷分離メカニズム
ハロゲン化鉛ペロブスカイト太陽電池の高効率性は、材料における顕著なキャリア特性、すなわちキャリア拡散長、キャリア寿命が長い、および電子正孔再結合が抑制されていることに起因する。しかし、キャリア特性の根底にある電荷分離メカニズムは依然として不明である。
第一原理分子動力学シミュレーションに基づいて、電荷分離過程のダイナミクスを検討した。電荷キャリアはバンド端を占有していると仮定し、電荷分離過程をCBMとVBMにおける波動関数の重なり積分で評価した。Aサイトカチオンとして大きさの異なる、有機カチオン、MA+(メチルアンモニウム、CH3NH3+)、FA+(フォルムアミディニウム、CH(NH2)2+)、 GA+(グアニディウム、C(NH2)3+) と無機カチオン、Cs+を用いて、第一原理分子動力学計算を行った結果、波動関数の局在化は、Aサイトカチオンの回転運動によるものではなく、鉛-ハライド格子の構造揺らぎに伴う静電ポテンシャルの変化に起因することが明らかとなった。
また静電ポテンシャルの変化に起因する波動関数の局在化と電荷分離は、タイトバインディングモデルに基づく解析により数値的に確認された[1]。以上の結果は、Aサイトカチオンがハロゲン化鉛ペロブスカイト材料の特異なキャリア特性にとって決定的な要因であるとは考えにくいことを示しており、有機無機鉛ハロゲン化物の性能に匹敵する新規なペロブスカイト太陽電池材料の可能性を示唆している。